micomia株式会社では、情報セキュリティ体制の強化の一環として、業務で使用するMacやiPhoneなどの端末管理を行っています。
システム開発会社では、業務端末からソースコード、クラウド環境、顧客から共有された資料など、多くの情報資産へアクセスします。
そのため、会社が端末を購入して従業員へ支給するだけではなく、下記の内容まで管理する必要があります。
誰がどの端末を利用しているのか
端末ごとに適切なセキュリティ設定
OSのアップデート対応
紛失・盗難時に会社として対応
退職時に端末や会社の情報を適切に回収
micomiaでは、Apple BusinessとMDM(Mobile Device Management)を利用し、Apple製デバイスを会社として管理できる環境を整備しています。
今回はその際の手順などを本記事で整理し、これから端末管理をされる方の役立つ情報になればと思っています。
目次
- 1. MDM(Mobile Device Management)とは
- 2. Apple Businessとは
- 3. 会社が端末を支給するだけでは十分ではない
- 4. Apple Businessで管理できる主な項目
- パスワード・画面ロック
- FileVaultによるMacの暗号化
- OSアップデート
- 5. ブループリントで設定をまとめて適用する
- 6. 管理対象Apple Accountを利用する
- 7. 紛失・盗難時に端末をリモートで管理する
- 8. 入社・退職時の端末管理にも利用する
- 9. MDMの目的は従業員を監視することではない
- 10. MDMだけで情報セキュリティ対策が完了するわけではない
- 11. 小規模な組織でも端末管理を仕組み化する
1. MDM(Mobile Device Management)とは
MDMは「Mobile Device Management」の略で、日本語ではモバイルデバイス管理と呼ばれます。名称にはMobileとありますが、スマートフォンだけを対象とするものではありません。企業で利用するMac、iPhone、iPadなどの端末について、設定やアプリケーション、セキュリティポリシーなどを組織として管理するための仕組みです。
Apple製デバイスにはMDMのための管理フレームワークが用意されており、企業は端末の設定やセキュリティ構成、アプリの配布などをリモートで管理できます。従業員それぞれに「OSを最新版にしてください」「画面ロックを設定してください」「このアプリをインストールしてください」と個別に依頼するのではなく、会社側から一定の設定を適用できるようになります。
2. Apple Businessとは
micomiaでは、Apple製デバイスの管理にApple Businessを利用しています。
Apple Businessは、Appleが企業向けに提供しているプラットフォームです。従来はApple Business Managerと外部のMDMサービスを組み合わせて利用する構成が一般的でしたが、Appleは2026年4月から提供を開始したApple BusinessにMDM機能を組み込みました。
デバイス管理
従業員管理
管理対象Apple Account
アプリの配布
デバイスへの設定適用
そのため現在は、Apple Business上で上記の内容を一元的に管理できます。
特にApple Businessは無料で始めることができるため専門のIT部門を持たない比較的小規模な企業でも、Apple製デバイスを管理しやすい仕組みになっています。
3. 会社が端末を支給するだけでは十分ではない
業務用のMacやiPhoneを会社で購入している場合でも、それだけで端末管理ができているわけではありません。端末の設定を従業員自身に任せていると、
画面ロックの設定が異なる
OSのバージョンが異なる
必要なセキュリティ設定が有効になっていない
インストールされているアプリが把握できない
といった状態が発生する可能性があります。
人数が少ないうちは個別に確認することもできますが、従業員や端末が増えるほど継続的な確認が難しくなります。そのためmicomiaでは、端末を「従業員に貸与しているPC」としてだけではなく、顧客情報や開発環境へアクセスする情報資産の一つとして管理しています。
4. Apple Businessで管理できる主な項目
Apple Businessでは、端末へ適用する設定を「構成」として作成できます。2026年現在、Apple BusinessではOSや端末の種類に応じて、Wi-Fi、VPN、FileVault、Gatekeeper、画面ロック、パスワード、ソフトウェアアップデートなど、さまざまな構成を管理できます。端末管理において、特に重要になるのは下記の項目です。
パスワード・画面ロック
業務端末に適切なパスワードや画面ロックを設定することは、基本的なセキュリティ対策の一つです。Apple Businessでは、端末に求めるパスコードやパスワードの要件を構成として設定できます。端末を紛失した場合でも、第三者が簡単に端末内の情報へアクセスできない状態を作ることが重要です。
FileVaultによるMacの暗号化
MacではFileVaultを利用することで、端末に保存されているデータを暗号化できます。端末そのものが盗難された場合でも、適切な認証なしに保存データへアクセスされることを防ぐための対策になります。Apple Businessでは、FileVaultの構成や復旧キーの管理にも対応しています。
システム開発会社ではローカル環境にソースコードや資料を保存することもあるため、端末の暗号化は重要な対策の一つです。
OSアップデート
OSのアップデートには、新機能だけではなくセキュリティ上の修正も含まれています。そのため、古いOSを長期間利用し続けることは避ける必要があります。Apple Businessでは、iPhone、iPad、Macなどに対するソフトウェアアップデートの構成を設定し、アップデートやアップグレードの適用を管理できます。
5. ブループリントで設定をまとめて適用する
Apple Businessには「ブループリント」という仕組みがあります。ブループリントでは、端末へ適用する設定やアプリをまとめて管理できます。例えば、
画面ロック
パスワードポリシー
FileVault
OSアップデート
Wi-Fi
VPN
業務用アプリ
などの設定を組み合わせ、対象となる端末や従業員へ適用できます。
新しい従業員が入社するたびに設定方法を説明し、本人に一つずつ設定してもらう方法では、設定漏れや設定内容の違いが発生する可能性があります。会社側で標準となる設定を用意しておくことで、新しい端末を追加した場合でも同じ基準を適用しやすくなり、端末の台数が増えた場合の運用負荷を下げることにもつながります。
6. 管理対象Apple Accountを利用する
Apple Businessでは「管理対象Apple Account」を作成できます。通常のApple Accountは個人が作成・所有するアカウントですが、管理対象Apple Accountは組織が所有・管理します。個人用のApple Accountと会社のアカウントを分離することで、個人データと会社のデータを区別して管理できます。
また、Google WorkspaceやMicrosoft Entra IDなどのIDプロバイダーと連携し、従業員の管理対象Apple Accountを作成・同期することも可能です。会社で利用するApple Accountを個人所有のアカウントに依存させないことは、入社・退職時のアカウント管理においても重要です。
7. 紛失・盗難時に端末をリモートで管理する
業務端末を持ち出して利用する以上、紛失や盗難の可能性を完全になくすことはできません。重要なのは、問題が発生した場合に会社として対応できる状態にしておくことです。
Apple Businessの組み込みデバイス管理へ登録された対象端末では、条件に応じて、
iPhone・iPadの管理対象紛失モード
Macのリモートロック
端末データのリモート消去
などを実行できます。
例えば、顧客資料が保存された会社支給iPhoneを従業員が紛失した場合、単に本人へ探すよう依頼するだけでは情報セキュリティ上、十分とはいえません。会社側で端末をロックし、必要に応じてデータを消去できる仕組みを用意しておくことで、情報漏えいのリスクを抑えることができます。
8. 入社・退職時の端末管理にも利用する
MDMは、日常的な端末設定だけではなく、従業員の入退社管理にも関係します。新しい従業員が入社した場合には、
業務端末を割り当てる
必要な設定を適用する
業務用アプリを用意する
必要なアカウントを発行する
といった対応が必要になります。
一方、退職時には、
業務端末の回収
Apple Accountの確認
各サービスへのアクセス停止
ローカルデータの確認
端末の初期化・再割り当て
などを行います。
micomiaでは、MDMだけですべてを解決するのではなく、GitHubやGoogle Workspace、クラウド環境などのアカウント管理と組み合わせて、入退社時のアクセス管理を行っています。端末だけを回収しても、クラウドサービスへのアカウントが残っていれば十分な対応とはいえません。端末とアカウントの両方を管理することが重要です。
9. MDMの目的は従業員を監視することではない
MDMでは端末に対して一定の管理を行うため、「会社が従業員の端末を監視する仕組み」という印象を持たれることがあります。しかし、micomiaがMDMを導入している目的は従業員の行動を監視することではなく、会社の情報へアクセスする端末について一定のセキュリティ水準を会社として維持することです。
例えば、「OSを更新してください」「画面ロックを設定してください」と社内ルールに記載するだけでは、設定漏れが発生する可能性があります。可能な範囲についてはシステム側で設定・管理することで、従業員個人の注意だけに依存しないセキュリティ体制を構築できます。Apple Businessでは、管理対象Apple Accountを利用して個人データと組織データを分ける仕組みも用意されています。
10. MDMだけで情報セキュリティ対策が完了するわけではない
MDMを導入すれば、端末管理に関する多くの対策を実施できます。一方で、MDMを導入しただけで会社の情報セキュリティ対策が完了するわけではありません。
例えば、
GitHubのアクセス権限
AWS・Google Cloud・FirebaseなどのIAM
多要素認証
APIキーや秘密情報の管理
セキュアコーディング
バックアップ
入退社時のアカウント停止
インシデント発生時の対応
などは、端末管理とは別に整備する必要があります。
micomiaでは、MDMを情報セキュリティ対策の一部分として位置付け、アカウント、クラウド環境、開発ルール、社内規程などを含めた情報セキュリティ体制の整備を進めています。
これらの取り組みの全体像はISO/IEC 27001取得を見据えて進める情報セキュリティ対策にまとめていますのでもしこれから体制を整えられる方はぜひ参考にしていただけますと幸いです。
11. 小規模な組織でも端末管理を仕組み化する
端末の台数が少ない場合、MDMを利用せず個別に管理することも可能です。しかし、従業員や端末が増えてから運用方法を変更すると、既存端末の設定変更やアカウントの整理などに多くの作業が必要になります。そのためmicomiaでは、組織規模が比較的小さい段階から、端末管理を個人に依存させない仕組みづくりを進めています。
システム開発会社として重要なのは、開発するシステムにセキュリティ対策を実施することだけではありません。そのシステムを開発するために使用する端末やアカウント、クラウド環境についても適切に管理する必要があります。今後も組織や開発環境の変化に合わせて運用方法を見直し、継続的に情報セキュリティ体制の改善を進めてまいります。
会社としての方針は情報セキュリティ基本方針、開発するシステムへの対策はセキュリティへの取り組みで公開しています。セキュリティ体制についてのご質問や開発のご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
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