1. 開発の背景|初心者が「最初の一鉢」を買えない理由
観葉植物は今、インテリアとして、ライフスタイルとして、幅広い世代から注目を集めています。しかし、そのブームには一つの大きな課題があります。
それは興味はあるのに、実際には買えない人が多いということです。
実際の売り場を訪れると、その理由がよく分かります。
植物の種類が多すぎるのに加え、どれが育てやすいのか分からない。
名前は書いてあっても、その植物が自分の生活環境に合うかどうかの情報がない。
値札を見て、その場でスマートフォンを取り出して検索して、育て方を調べて、ようやく一つの植物のことがわかる。
この一連の行動は、初心者にとってかなりの負担だと思います。
そして多くの人が、結局何も買わずに帰ってしまうのではないかと感じました。
植物SNSアプリ「でぃぐりーん」は、この「買いたいのに決められない」という状況を解決することをメイン軸に設計しました。
単に植物の写真を見せるのではなく、「これなら自分でも育てられそう」という判断を、その場でできるようにする。その体験設計が、このアプリの核になっています。
一般的な画像SNSでは、植物の写真は流れてきます。
しかし、初心者の方が本当に知りたい「どこで買えるのか」「育てるのは難しいのか」「日当たりはどのくらい必要か」という実用情報は、そこあることはなく別のサービスで調べる必要があります。購入前の不安を解消する情報が手に入らないのが、観葉植物のブームにもかかわらず初心者が一歩踏み出せない、もう一つの理由だと考えました。
観葉植物の課題は、育て始めた後だけではなく、買う前の段階にもあるという認識がでぃぐりーんの設計全体の方針を決める柱になっっています。
2. 専門SNSを作る前に現場を体験した話
専門性のあるアプリを設計するとき、机の上だけで考えた仮説には限界があります。
でぃぐりーんの開発で私たちが最初にしたことは、開発チーム自身が実際に植物を買い、育てるところから始めることでした。
実際の植物売り場に行ってみると、画面上では気づきにくかった困りごとが具体的に見えてきました。
種類の多さ、情報の見えにくさ、比較のしにくさなど購入における障壁を体験を通して直に感じました。
「この植物、育て方は?」と思っても、その場でスムーズに判断できる情報源がなく、購入前でつまずくという仮説は、こうした現場体験から得られたものです。
売り場にいる実際の初心者の様子を観察すると、多くの人が同じ場所で立ち止まり、同じような疑問を持っていることが分かりました。
私たちが設計すべきだったのは「植物の情報を整理したデータベース」ではなく、「植物との出会いの瞬間を支える体験」に価値をおいたアプリではないかと気づきを得ました。
ユーザーが売り場でどこに立ち、何に迷い、どんな情報があれば購入に進めるのかを理解することが、でぃぐりーんの正しい設計と考えアプリの開発をご依頼いただきましたお客様と共に打ち合わせを重ねて設計を行いました。
専門SNSを作る際の重要なことは機能を先に考えるのではなく、ユーザーがどこで止まり、何を知れば前に進めるのかを把握することであると考えます。植物の名前や育て方を知ることも大切ですが、それ以上に大切なのは、初心者がどの場面で迷い、どの情報に価値を感じるかを開発チームが理解することです。
UIの細部である「背景色の選択、コンテンツの並び順、ボタンの配置」なども、机上の設計より実際の操作観察から生まれた判断です。
植物らしさを演出するためにグリーンを基調にしながらも柔らかさと親しみやすさを持たせた配色も、単なる装飾ではなく、アプリを開いた瞬間に感じる世界観の一貫性を作りました。
観葉植物専門アプリとしての体験価値が、見た目の段階で伝わることが意識してデザインを設計しています。
3. 「分野専門のSNS」である必然性|なぜ汎用SNSではダメなのか
「SNSがあるなら既存のものを使えばいい」という意見は当然あります。
InstagramやX(旧Twitter)でも植物の写真は投稿できますし、コミュニティも存在します。
では、なぜ今回はあえて植物専門のSNSを作る必要があったのかを開発背景から紐解いていきます。
独自のSNS開発が必要な最大の理由は、汎用SNSでは「実用情報が流れの中に埋もれてしまう」からです。
一般的な画像SNSでは、写真の魅力が中心になります。
そのため、どこで買ったのか、どう育てているのかといった情報は、ビジュアル重視のフォーマットの中では目立ちにくくなります。初心者にとって重要な実用情報ほど、見つけにくく、さまざまなサービスを行き来する必要があり、これは構造的な問題で使い方や心がけで解決できるものではないと考えました。
もう一つの問題は、投稿の種類の分散です。
一般的なSNSでは、植物に関心のある人もいれば、全く関心のない人もいます。
植物の話をしたくても、テーマが分散しやすい環境では投稿しにくいと感じる人も多く、「植物の投稿をしていいのかな」という気後れが、発信を阻む要因になります。テーマが明確なコミュニティでは、投稿の文脈も読み手の期待も揃いやすくなり、発信のしやすさに直結します。
三つ目は、体験の目的の違いです。一般的なSNSは「見て楽しむ」「つながる」ことが中心です。
でぃぐりーんが目指したのは、投稿を見て終わるのではなく、その植物を買うかどうか、育てられるかどうかを考えられる体験です。
「自分もやりたいなあ」で終わらず、実際に行動しやすくするという体験設計の差が、専門SNSとしての価値になり得ると考えました。
植物には、見た目を楽しむ側面と、育てる実務の側面があります。この両方を理解しているでぃぐりーんだからこそ、植物日記のような発信性と、購入先や育成情報のような実用性を同時に扱うことで、植物育成ならではのSNS体験を形にしました。
コミュニティ設計でも、この専門性に特化させた体験設計が活きてきます、
でぃぐりーんでは掲示板を「植物日記」と「ヘルプ」の二つに分けています。
植物日記は育てる楽しさを発信する場所、ヘルプはネット検索では答えが見つからない悩みを相談する場所です。
コミュニティでは教え合いが日常的に盛んに行われています。
植物に興味のある方は新しく植物に興味を持った方の困り事は解決したいもので、そういったコミュニティの活動をデジタルでも行えるようにでぃぐりーんを設計しています。
4. MVPでスピード開発した判断とその成果
でぃぐりーんの開発では、MVPとしてのスピードを重視しながら、体験の核になる機能はしっかり押さえるという方針で進めました。
技術選定では Flutter と Firebase を採用しています。
なぜスピードを優先したのか?についてですが、新しいアプリを立ち上げるとき、最初からすべてを作り込むのは現実的ではないからです。
作り込み以上に重要なのは、まず使える形を早く市場に出し、体験の検証を進めることです。
専門アプリでは、実際に触ってもらって初めて見えてくる改善点が多くあります。
リリース前の仮説より、実際のユーザーの行動からアップデートを重ねていくことの方が価値があります。リリースを遅らせて完璧を目指すより、核心を外さずに早く出して検証を積み重ねることが大切であると考えています。
技術選定についてですが、Flutter と Firebase を選んだ理由は、AndroidとiOSの両方をスムーズに開発し、リリースを早くするためです。
Firebase はリアルタイムデータベース、認証、ストレージを一括で提供し、バックエンドの構築コストを大幅に削減できます。
Flutter はiOS・Androidのクロスプラットフォーム対応が一つのコードベースで完結し、開発速度が高まります。
この組み合わせは、MVPフェーズのスピード開発に適しており、micomiaとして複数のプロジェクトで積み上げてきたノウハウも活きますので今回選定しました。
しかし、スピード開発を優先しても削ってはいけない体験の核があります。でぃぐりーんの場合、その核は「購入場所の情報」「育成の判断支援」「成長の記録」「悩みの相談」という四つの体験です。
スピードは重視するが体験価値を築いている核となる機能をしっかり実装することが大切だと考え、設計の時間を十分に取るためにもFlutterとFirebaseを選びました。
このプロジェクトで難しかったのは、機能実装より体験の独自性でした。
「植物感をどう出すか」、「でぃぐりーんならではの体験をどう演出するか」
単にSNSを作ることではなく、植物の世界にふさわしい意味を持つアプリにすることを使命に専門アプリでは、この差別化を意識する必要がありました。
また、AI、投稿、位置情報は、それぞれ別々に見れば珍しい機能ではありませんが、それらを植物の購入前体験に結びつけることで、はじめてアプリ全体の価値になります。
機能を増やすのではなく、一つの行動文脈に統合することが重要であると考えていますのでデザインの統一性だけではなく機能やそれに伴う操作の統一性まで意識して設計しています。
5. 位置情報UXの設計|「この植物どこで買えるの?」を解決する
でぃぐりーんにおいて、位置情報機能は単なる「マップ表示」ではありません。
植物との出会い方そのものを変える仕組みとして設計しています。
観葉植物は、どこでも同じ商品が手に入るわけではありません。
店によって品揃えが異なり、珍しい植物ほど出会える場所の情報に価値が生まれます。
しかも時間には限りがあるため、すべての植物店を回ることは現実的ではありません。
だからこそ、購入場所を共有できることは、単なる位置情報以上の意味を持っています。
「この植物、どこで買えるんだろう」という疑問への答えが、コミュニティの中に積み上がっていきここは外に出ていない情報が知れる場所だとユーザーの方に思っていただけるような機能となっています。
一般的なSNSでも位置情報は扱えますが、でぃぐりーんの特徴は植物の投稿と購入場所が結びついている点が異なります。
「この植物を買った店はここ」という情報がセットで共有されることで、場所の情報だけでなく「どんな植物がその店で手に入るのか」をまとめて理解できます。
投稿写真に購入場所を紐付け、街のショップを直感的に発見できるUIを実現しました。
この機能が生み出す体験の変化は大きいものです。
従来は、植物店へ行ってから何があるかを見る「受け身の探し方」が中心でした。
でぃぐりーんでは、欲しい植物を見つけてから行き先を決める「能動的な探し方」ができるようになりました。
アプリを開いて気になる植物を見つけ、その植物がどこで買えるかを確認し、近くの植物店へ計画的に向かうというフローが自然に実現します。
UX設計の観点では、地図操作の直感性を重視しました。
マップ上でショップのアイコンをタップするだけで、そのショップで購入された植物の投稿が確認できます。
またその逆の植物の投稿からショップの場所も確認できます。
この双方向の動線が、植物探しを「調べること」から「発見すること」に変えユーザーの方の操作をより快適にしています。
植物店巡りには偶然の楽しさがあります。
でぃぐりーんは、その偶然を消すのではなく、巡る前のどの店に行けば何が売っているのかという判断を助けることで体験をより豊かにする方向を選びました。
事前に候補が分かっていると、限られた時間の中でも充実した動き方ができます。
「今日はどの植物店に行こうか」という計画が立てやすくなることで、植物探しそのものが楽しいイベントになっていくと考えています。
6. AI機能の設計思想|植物識別・おすすめ機能の組み込み方
でぃぐりーんにAI機能を入れた理由は、ユーザーがアプリを使いながらGoogleへ移動しなくていい体験を作るためです。
アプリを見て気になる植物があっても、結局Googleで調ベ直さないといけないという流れが続くとユーザー体験は分断され、アプリの価値も半減してしまいます。
でぃぐりーんに搭載されているAI機能は2つです。
1つ目は投稿時の植物自動識別と基本情報の自動登録で、2つ目は育成情報の自動補完です。
投稿時の自動識別を入れた理由は、投稿者の負担を減らしながら、閲覧者の理解を早めるためです。投稿のたびに細かい植物情報を手入力してもらう設計では、発信側の負担が大きくなります。
一方で情報が少なすぎると、閲覧者には価値が伝わりません。
AIを使って基本情報を自動補完することで、投稿のしやすさと閲覧時の分かりやすさを両立しました。
「投稿したら情報が自動で付いていた」という体験は、投稿者にとって小さな感動にもつながっています。
AIの恩恵が最も大きいのは、購入前の判断場面です。
「この植物、育てやすい?」「日当たりはどのくらい必要?」
こうした疑問に、その場で答えが得られることで、ユーザーは自分の生活にその植物を置けるかどうかを考えやすくなります。
これは単なる情報提供ではなく、意思決定の支援だと考えています。
購入前の不安を解消する情報がアプリ内で完結することで、「よく分からないから買わない」という離脱を防ぎ、買うにしても結局Googleで調べないといけないという面倒くささを排除しています。
AI設計で重視したのは、派手さより安定性です。
植物系アプリで必要なのは、多機能なAIではなく、日常利用に耐える安定した必要情報の補完機能と考えました。
植物の世話のために必要な情報が安定して自動入力されることが、繰り返し使える実用性につながります。技術的な目新しさよりも、毎日の投稿と閲覧の流れの中にAIが自然に溶け込んでいることを優先しました。
また、コミュニティ機能との組み合わせも重要な設計上の考慮点でした。
AIが基本情報を自動補完する一方で、AIでは拾いきれない個別の悩みはコミュニティのヘルプ機能で受け止めるという役割分担が成立しています。
「葉が黄色くなってきたけどどうすればいい?」という具体的な相談は、AIより経験者のアドバイスの方が適切なこともあります。
AI万能主義ではなく、コミュニティの知恵との組み合わせで植物初心者の課題を解決する設計を行っており、ユーザー同士のコミュニケーションでコミュニティへの溶け込みを自然にできるようにする狙いもあります。
7. まとめ|植物初心者の「最初の一歩」を支えるアプリとして
でぃぐりーんの開発を通じて、私たちが感じた最も重要なことは、課題は「育て始めた後」だけでなく、「買う前の段階」にもあるということです。
植物初心者が直面する壁は、育て方の知識不足だけではありません。
「何を買えばいいか分からない」「どこで買えるか分からない」「自分に育てられるか分からない」という購入前の不安が、植物初心者の方に多いという事実に気づきました。
そのためでぃぐりーんは、植物SNSとして設計されながらも、その体験の核に「購入前の意思決定支援」を置きました。
「位置情報で購入場所を見つけやすい」「AIで育成難易度を即座に確認できる」「専門SNSならではのコミュニティで、埋もれていた知恵を可視化する」
これらの機能による体験が統合されて初めて、「アプリの中で理解し、判断し、行動へ進める」体験が生まれると考えています。
スピード開発を選んだことで、早い段階からユーザーの実際の使われ方を観察できるようになりました。MVPで出した体験の仮説が機能していることが確認できれば、次のアップデートでさらに精度を高めていけると考えています。
リリース前に完璧を目指して長い時間をかけるより、核心を外さずに早く出して学ぶことの方が、長期的にアプリの価値を高めていきます。
現場体験から設計を始めたことも、今振り返れば設計する前の絶対に欠かせないプロセスでした。
植物売り場に立ち、初心者の目線で見る体験があったからこそ、「購入前でつまずく」という具体的な課題を発見でき、それに対応した機能設計ができました。
机上の仮説だけで進めていたら、全く違うアプリになっていたかもしれません。
植物を始めたいのに始められないという壁を、UI/UXで乗り越えることを目指したでぃぐりーんの開発記録を今回はご紹介しました。
micomiaではただ作るだけではなく使われるアプリを作るという信念のもとアプリの要件から設計、実装、リリースまでを一貫してサポートする開発サービスを提供しています。
もし作りたいアプリやシステムがあればお気軽にご相談ください。


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